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2024/10/09
おはようございます。がんばる中小企業と創業者を全力で支援する「広島市中小企業支援センター」の創業支援担当・児玉です。
ちょっと前に見たドラマ(20年位前のドラマの再放送)で、写真館の主人A(菅井きん)が、その写真館(自宅付き)の土地・建物を娘Bに譲ろうとして騙される話がありました。Bに譲る際の贈与税を避けるため、次のスキームで引き継ごうとしたのですが、不動産会社Cに騙されたのです。
①Aから、Cにその土地・建物を低額で譲渡する
②譲渡した価格で、BがCから購入する (Cは②の取引を行うつもりはありませんでした)
※顧問税理士(愛川欽也)は、遺言書を作成してBに相続させるようにと勧めたのですが、Aはもう一人の息子が権利証を持ち出して写真館の土地・建物を勝手に売却するのが心配で、直ちにBに譲りたいとの意向でした。顧問税理士も上記の方法について思いついてはいたのですが、「筋が悪い」とつぶやいて黙っていました。
今であれば、このような方法でなくても「相続時精算課税」(以前のブログをご参照ください)の活用も考えられます。ドラマの初回放映時点では「相続時精算課税」は施行前だったのでしょうか。
AからBへ直接贈与した場合には贈与税が発生しますが、このスキームの狙いは、Cを経由して、売買取引としてBに土地・建物を移転させることで、贈与税を回避することなのでしょう。また、AからBへ相場より大幅に安く譲渡した場合には、身内なので低額譲渡(贈与税が発生)と判定される可能性が高いと考え、第三者であるCを間に入れたのでしょうか。Cが信頼できる相手かどうかという話もありますが、このスキーム自体税金対策としてどのようなものでしょうか。
まず、①、②の取引については、もし通常の取引としての実態が伴ってなく、贈与税回避の意図が見え見えだとすると、これらは実質的にAからBへの低額譲渡であるとみなされるかもしれません。①のAからC、②のCからBへの譲渡についても、それぞれ合理的な理由が説明できないと、低額譲渡と判定される可能性は否定できないと思います。
またAに関しては、譲渡所得(所得税が発生)についても考慮する必要があります。
低額譲渡と判定された場合、その取引は時価で行われたとみなされます。売主、買主が個人、法人の違いで、発生する税金の種類、取扱いは次のように変わってきますが、基本的には取引された価格でなく、時価に基づき税金の計算がされることになります。
ア 個人(売主)→個人(買主)の場合
売主:譲渡価格で譲渡所得を計算(この場合は時価での計算はしない)
買主:時価と購入価格の差額分について贈与を受けたとみなされる(贈与税の対象)
なお、取得価格は購入価格等とするが、購入価格が時価の1/2未満の場合には売主の取得価額を引き継ぐ場合あり。
イ 個人(売主)→法人(買主)の場合
売主:時価で譲渡したものとして譲渡所得を計算
買主:時価で取得したものとする。時価と購入価格の差額は受贈益となる
(同族会社の場合、株式の評価額の上昇に伴い株主に贈与税が発生する場合あり)
ウ 法人(売主)→個人(買主)
売主:時価での譲渡とされ、時価と譲渡価格との差額は寄付金(相手が会社の従業員・役員の場合には給与・役員賞与)となり、損金算入は制限される
買主:時価で取得したものとされ、購入価格との差額は一時所得(又は給与所得)
エ 法人(売主)→法人(買主)
売主:時価での譲渡とされ、時価と譲渡価格との差額は寄付金(損金算入に制限あり)
買主:時価で取得したものとする。時価と購入価格の差額が益金となる
低額譲渡の判定は、譲渡価格が「時価より著しく低い価格」かどうかによりますが、「時価」及び「著しく低い価格」については、一律の基準はなく個々の事情に即して判定することになります。
※所得税に関しては、上記イの売主(個人)に関しては、政令により「時価より著しく低い価格」を時価の1/2未満と定められていますが、その他(ア、ウ、エ及びイの買主)については、法人税や贈与税が課せられる取引なので上記の政令は適用されません。また、ウの買主(所得税が適用)については「時価より著しく低い価格」ではなく、単に「時価より低い価格」とされています(所得税基本通達)。
低額譲渡に関する規定の趣旨は、不当に低い価格の取引による税金逃れを防止することです。通常の取引をされる場合には関係ないとは思いますが、オーナー社長が自分の財産を会社に低額で譲渡するケースは考えられます。このような場合には、思わないところで税金が発生しないよう、事前に専門家にご相談されることをお勧めします。
当センターでは税理士等の経営の各分野の専門家が皆様のご相談をお受けします。詳細・お申し込みは次のとおりです。
※上記の内容は、令和6年10月1日現在の法令等に基づき記載しています。