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支援センター職員によるブログ

カーボンニュートラルに向けて

2021/10/27

向井コーディネータ(技術) おはようございます。 がんばる中小企業と創業者を全力で支援する「広島市中小企業支援センター」のコーディネータ・向井です。

                                                                         

 2021年8月に発表されたIPCCの報告書では、「人間の影響が気候システムを温暖化させてきたのは、疑いの余地がない」とほぼ断定しています。また、その気候モデルの礎を築いた真鍋博士のノーベル賞の受賞が決まったことや、今月末にはCOP26も予定されており、世界はカーボンニュートラル(CN)に向けどんどん加速していくものと考えられます。このCNのポイントは、現状のエネルギー消費に対して、非化石燃料への転換と省エネルギーを推進することです。それでも残留するCO2は回収して有効利用したり貯蔵したりするCCUS※)の考えで、CO2の発生を実質ゼロにするというシナリオです。CNの中で個人にできることは、一つは省エネであり、もう一つは身近にある再生可能エネルギーを活用しながら、ライフスタイルを量から質へと転換することでしょうか。

 

 ここでは、CNのお手本となるCO2を出さずに自然エネルギーだけで220年間現役で動いている機械を紹介します。それは、下の写真に示した福岡県朝倉市の筑後平野にある朝倉の三連水車です(2006年8月14日筆者撮影)。この地区にはこれ以外に二連水車2基が稼働していますが、今回はこの三連水車の仕様を説明します。川から水田に向かって水を高さ2.5m、平均流量102L/sで汲み上げ、13.5ha(甲子園の3.5倍)の水田を潤しています。これを5月中旬から10月中頃まで約5か月間稼働させます。仮に、ポンプ効率65%、電動機効率90%の電動ポンプで仕事をすれば15,300kWh/年の電力量が必要で、6.8t/年のCO2の排出を伴います(電力会社の平均CO2排出係数で試算)。これは、家庭部門の世帯当たりの年間CO2排出量の約2.5倍に相当します。その分のCO2排出削減に貢献していることになります。また、水車の構造を見ると軸以外は木製で竹釘を使い、ライフサイクルコストを考えても優れた機械といえます。2017年7月の九州北部豪雨では流木等でこの水車も大きな被害を受けましたが、関係者の努力で短期間に復旧しました。そういう意味でもメンテナンス性にも配慮され、今までの生産性や効率最重視の機械に対してCN時代の物差しで評価すればトップレベルの立派お手本ではないかと考えています。

 

 200年余り前の良寛さんの句に「焚くほどは風がもてくる落葉かな」というのがあります。(私が庵で燃やして煮たきするくらいは、風が吹くたびに運んでくれる落ち葉で十分間に合うことだ。だから私にとっては、この山中での暮らしは物に乏しくとも満ち足りていることよ。)これが、2050年CN達成の一つの示唆ではないかと思います。

 

 奇しくも朝倉の三連水車が動き始めた頃と良寛さんが句を読んだ頃がほぼ同じ時期です。今から30年先の人達やさらにその先の子孫のためにも今まさに、英知を結集するときです。

 

 ※)CCUS:Carbon Capture, Utilization and Storage.  CO2回収・有効利用・貯蔵

 

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