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支援センター職員によるブログ

山中漆器と九谷焼

2022/10/26

向井コーディネータ(技術) おはようございます。 がんばる中小企業と創業者を全力で支援する「広島市中小企業支援センター」のコーディネータ・向井です。

                                                                         

 コロナがある程度落ち着いたこともあり、父の日にもらった体験ギフトを使い、サンダーバードに乗って金沢方面に旅行しました。今回の旅行の狙いは、漆塗りの体験と九谷焼のぐい飲みを探すことでした。ここでは、山中漆器について得られた興味深い情報を紹介します。

 

 加賀温泉駅で降り、山中温泉街の奥まった工房で漆塗りを体験しました。漆器を作るには大きく3工程あって、木材の塊を器の形にする「木地挽き」、それに漆を塗る「塗り」、さらにその上から漆で模様を描く「加飾」を経て完成します。この山中温泉地区には有名な木地師が何人もおられるようで、写真左に示したように壁厚さがシャープペンシルの芯と同程度の薄い漆器に仕上げる加工技術に強い関心を持ちました。

 

 職人さんに、代表的な漆器であるお椀の加工方法について聞いてみました。欅や桜の木の塊から轆轤と刃物を使って削り出しますが、はじめに厚さ20mm程度のお椀を作り、この状態から乾燥と削りを繰り返しながら長い日数をかけて薄くしていくのがポイントだそうです。このことから、乾燥収縮の異方性による歪を緩和し、構造物としての剛性や強度を維持しながら薄肉のお椀に仕上げていくのだろうと想像しました。当然、個々に木目の繊維方向や硬さの違いがあり、その状態に応じて挽物にかかる切削抵抗を少なくするよう自ら工夫した様々な刃物を使って削っているそうです。まさに職人技です。

 

 次の工程では、この挽物に漆を塗ります。天然の漆は化学的に主成分のウルシオール、水、多糖類、糖蛋白、ラッカーゼ酵素からなるエマルション(水相に脂質の微粒子が分散した牛乳の様な状態)です。漆を塗った後のウルシオールは、ラッカーゼ酵素の働きにより室温で多湿の環境下において酸化重合して網目構造の高分子被膜を形成し、薄肉の挽物を補強した山中漆器となります。この木地挽きと漆によって造形美と機能美を引き出している気がします。この漆に関わる化学は、化石資源に依存しない栽培型の天然資源であり、グリーンケミストリーやサステナブルケミストリーとして最近見直されています。

 

 最後は、その漆器に模様や蒔絵を施し仕上げます。今回の旅行では、既に仕上がった漆器に顔料を混ぜた色付き漆液を使いました。保護具によるかぶれ予防をしながら、細筆で模様を描き、その後から金粉を蒔くといった加飾技術を経験しました。画竜点睛、加飾により見た目が決まるので本番では緊張しましたが、重合するまではアルコールで消せるということが分かり、大胆に試行錯誤しながら作品を完成させました。それを漆室(室温多湿槽)で処理して後日送ってもらうことになっています。

 
 旅行から帰り、10月8日(旧暦9月13日)の十三夜にお月さんを見ながら、写真に示した山中漆器と九谷焼のぐいのみでお酒をいただきました。モノからコトへ、先人の築き上げた伝統工芸に触れ、余韻に浸るいい旅となりました。

 

山中漆器と九谷焼.jpg

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