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支援センター職員によるブログ

インドのテラコッタクーラー

2024/09/25

向井コーディネータ(技術) おはようございます。 がんばる中小企業と創業者を全力で支援する「広島市中小企業支援センター」のコーディネータ・向井です。

 今年の夏も危険な猛暑が続き、メディアから頻繁にエアコン(EHP:電気式ヒートポンプ)の使用が呼びかけられました。一方、海外に目を向けると、インドでは気温が50℃を超えることもあり、特に乾季の厳しい暑さへの対策が急務となっています。しかし、急速な経済成長と人口増加に伴い、電力需要が供給を上回っているため、エアコン(EHP)の普及率はわずか4%にとどまっています。このような状況下で、低エネルギー消費のテラコッタクーラー(以下TC)が再評価されています。今回、その仕組みと性能について考察します。

 テラコッタは素焼きを指し、TCはインドで伝統的に使用されてきた技術です。そのルーツは古代ペルシャやメソポタミアにまで遡るといわれています。図1にその外観を示します。TCは多孔性の円筒形の素焼きをフレーム内に積み重ねた構造で、散水して円筒を湿らせることで機能します。基本的な原理は、水が蒸発する際に周囲の熱を奪う自然の冷却作用を利用したものです。また、外部からの風の取り込みや湿度差、温度差を利用した自然対流を促すことで、ほとんど電力を使わずに冷気を生成するシステムとなっています。

 次に、この技術の効果を具体的に検証してみました。インド・ニューデリーの2023年の月別最高気温と湿度データを基に、不快指数を算出しました。さらに、TCを使用し、断熱しつつ飽和湿り空気まで水分を蒸発させた際の出口温度と不快指数も求め、効果を評価しました。この検証においては、気候データの調査からTCによる出口空気状態の試算まで、生成AIのChatGPTを活用しています。

 図2(a)にニューデリーの月別最高気温と相対湿度を示します。湿度は乾季と雨季で大きく異なり、3月から10月にかけて気温は30℃を超え、特に5月から6月には40℃を超えます。図2(b)はTC未使用時と使用時の月別温度の比較、図2(c)は月別不快指数の比較を示しています。このデータから、乾季(11月~6月)がTCの効果を最大限に発揮する時期であることがわかります(ただし、理想条件下での最大効果の約半分程度と推定されます)。一方、雨季(7月~9月)ではTCを使用しても不快指数は80以上(耐え難い暑さ)を示し、未使用時と比べても改善はわずかにとどまりました。このような、高温多湿の環境において、費用をかけずに少しでも改善できる技術を探索するのも価値があると思っています。

 今後、アフリカや東南アジアの一部地域でも、この冷却技術が有効とされる可能性があり、地域ごとの環境や経済状況に応じた技術のカスタマイズが進むことで、さらなる普及が期待されます。また、この技術がSDGsの目標達成にも寄与することを願っています。

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